2007年5月3日〜5日 駒澤大学高等学校 学校山林視察報告                    文責:長谷川宏一・谷口英嗣

参加メンバー:科学研究部顧問 谷口英嗣
         科学研究部(学校山林アドバイザー) 長谷川宏一
         科学研究部部長 横田佳祐

視察概要:

学校山林で実現しうる環境教育活動案をまとめるため、本年より赴任したアドバイザーを含む3 名での現況視察を行った。また、学校山林における科学研究部の活動内容を検討し、研究部部員は実習的な研究活動(長野県黒姫に生息する杉の細胞気孔の観察)を行い部活動の一環とした。

5月4日には、ホテルライジングサン支配人、佐藤洋一氏、信州自然大学校、平木順氏、信州自然大学校、金原吉孝氏の3名と今後の学校山林の進め方について話し合う機会を持った。

現況報告:

学校山林A地区

植栽地区として伐採が行われている。
昨年度植樹されたミズナラは生育しており、芽をふくらませているものもあった。しかし、植樹した場所は傾斜地であり、また全体を伐採していることから生育に必要な土壌(黒土)の流出が懸念される。全体に更地に近く、伐採したニセアカシヤなどの樹木が周りに積まれており、景観としては非常に殺風景なものになってしまっている。

提言(基本的事項)


  例)   
  写真:皆伐されたA地区。

学校山林B地区

ここは保護区のため手をつけられていない。
ニセアカシヤをはじめスギ、サクラ、ミズキなど多種の植物が生育する唯一のゾーンであり、他の地区との比較のためにも今後も保全することが望まれる。

提言


  

学校山林C地区

昨年度秋以降の間伐施業により大規模な間伐が行われていた。森林は非常に疎であり、切り株や伐倒された木材が散在している。
木材を育成するための森林施業の方法を伝える趣旨の学習効果は望めるが、他の生物多様性や環境保護といった観点への教育への応用は難しい状況である。樹木間が非常に疎になってしまったため、周囲の人工物が見通せるようになってしまい、樹木に囲まれているという感覚が得られにくい。

提言


  
  写真:間伐されたC地区。周囲の人工物が見通せる。

総括

現在「学校山林」は「木材生産の場として森林をつくる施業」を多く行っている。一方、森林の多様的な価値(「生態系・生物多様性の保護」「レクリエイトの場としての森林」など)を生徒に伝える場として提供できる場所が限りなく少なくなってしまっているのが現状である。「育樹」・「森林と人間との共存」を考える上で、現在行われている施業や木材生産の場としての森林を生徒が知ることも、重要な教育活動の一つと考える。
しかし今後、学校山林として「森林と人との多様な関わりを実感し、生徒がこれについて自分なりに考える事のできる、駒澤大学高等学校にしかない教育の森」をつくっていくためには、上記の「生態系・生物多様性の保護」「レクリエイトの場」としての森も必要欠くべからざるものと考えられ、その目的で保護し、提供してゆく森林スペースを確保し、生徒が森に入り「守りたい」「心地よい・楽しい」と感じる森作りも課題になると思われる。

この点に関し、佐藤氏をはじめとしたメンバーとコンセンサスをとった。森作りは20年〜30年スケールでのビジョンが必要である。しかし、一度ある方向(例えば木材生産)で施業をはじめた森林は、なかなか別の方向へ持っていくことはできない。学校山林として活動を始め、2年目の本年「森林の多様価値を教育できる学校山林作り」というコンセプトで、里親となる新たな地区の確保(拡大)を含め、新たな提案、要求を出し、お互いに話し合う必要があると、佐藤氏をはじめとする自然大学校の方々との話し合いの中で意見が出た。

具体的例として里山保護区・レクリエイト(散歩道や小屋・森林を見渡せる見晴台など)スペースの確保のため、近隣の森林の提供をさらに求めることも考えられ、そのような形で協力いただくことも可能との回答を佐藤氏より得た。また、学校の日常活動から出たゴミを使って有機農業を行うなど、学校の日常活動と現地との交流を深めていくことが考えられる。この点に関しても話が具体化した場合、協力を依頼できる旨の了解をとった。


追加:本年林間学校での森林体験について

本学では夏休みの最初の期間に高1年生を対象とする林間学校にて、学校山林に植樹を行っている。本年から数年?は、この記念樹(2本)の植樹とA地区での育樹・森林作り体験を行う予定である。この体験選択の生徒には以下の様な体験を行うことが提案できる。

昨年植樹したミズナラの周りに共生可能な花を植える。 (また花壇作りをして傾斜地を段構造に少し施工し、土壌の流失予防としてもよい) A地区中央(ミズナラのラインの横)に山桜など1mほどに育った樹木をB地区から移植する。 木材を使い写真に示したような「木の名札」を作りB地区の木にかけていく、名札の裏には日時とクラス・氏名を記入し、記録とする。

森林施業された森(学校山林C地区)・保護し手入れをしない森(学校山林B地区)を歩き、その後信州自然大学校のインストラクターと共に癒しの森(レクリエイト目的で手入れされた森)(黒姫高原ホテル近く)を歩く。多様な森が存在し、人間のかかわり方によって森林が大きく姿を変えることを生徒に考えてもらう。またインストラクターより森の見方・遊び方を癒しの森で学ぶ。

参考:科学研究部活動の様子(高所の枝を取るように高枝切りバサミを更に工作し、杉の葉をサンプリングして、その気孔を観察、計測した)