巡検に行こう!

巡検とは、地学的・地理学的にユニークな場所に出かけ、その場所に詳しい専門家のガイドを受けながら土地を歩くことをいいます。言うなれば学術的なガイドツアー。
まわりの景色は同じでも、何かを学んでから歩くと、これまで見えなかった何かが見えてきます。
行く前はどれも同じような山にしか見えなくても、帰りには山々の区別ができるようになり、さらには台地、低地、丘陵地など、人がその土地のちがいを嗅ぎ分けて巧妙に生活していることなどにも気づかされるでしょう。

今年も1年生12クラスを2班に分けて、6クラスずつ2日間、箱根に行ってきました。
当日は渋滞に遭うなどして全体に1時間ほど行程が押したものの、天候にも恵まれ、最高の巡検日和となりました。紅葉と、青空と、間近に迫る富士山の雄大さと、教室での学習が苦手な人でも、きっと楽しめる場面があったのではないかと思います。

見学地は以下の通り。(御殿場コースの場合。小田原コースはこの逆ルート。3クラスずつ、大涌谷で交差する形で移動)

 1)長尾峠
 2)湿生花園
 3)大涌谷
 4)山伏峠
 5)大観山
 6)地球博物館

こちらのコースは、長尾峠(古期外輪山)→湿生花園(カルデラの底)→大涌谷(中央火口丘、最新の噴火跡)と、箱根の古い山から新しい山までを1つひとつ見て歩き、大涌谷で昼食後、カルデラ全体を見渡せる山伏峠、大観山という絶景スポットに出て全体観察。帰り際に博物館に立ち寄るようなイメージです。反対に逆ルートは、先に全体観察をしたのち、午後から部分を見ていくようなイメージになります。

下に各観察地のポイントと、特徴的な写真なども載せておくので、生徒の皆さんはぜひ記憶を辿ってみてください。
(写真はいずれもクリックで拡大します)

    箱根の見どころ 地学ver.

観光地、温泉地として名高い箱根ですが、地学的に貴重な景観が残る場所として、平成24年9月24日に「ジオパーク」として認定されました。ユーラシア、北アメリカ、フィリピン海、3つのプレートが重なる位置にあり、きわめて多様な火山地形が見られるためです。 以前は放置されて草茫々になりつつあった場所も、いくらか整備されて観察しやすくなっていました。

 1)長尾峠
   ・カルデラ壁の観察 →箱根がかつて成層火山だった証拠
   ・山崩れ堆積物の観察 →最新の噴火の痕跡を遠望する(大涌谷と芦ノ湖の成因)

 2)湿生花園
   ・湿原と泥炭層 →カルデラの底を体感する
   ・神代杉 →死してなお腐らない木の不思議

 3)大涌谷
   ・自然観察路の散策 →噴出する火山ガス/ 荒涼とした大地(火山景観を味わう)
   ・黒たまご →硫化水素と鉄分の化学反応

 4)山伏峠
   ・箱根屈指の絶景 →富士山から駿河湾、芦ノ湖までが一望できる
   ・偏形樹の観察 →海風のもたらす影響
   ・非対称稜線 →カルデラの縁から内と外を眺める

 5)大観山
   ・三重式火山の観察 →箱根が「火山地形の博物館」と言われる所以がわかる!

 6)地球博物館
   ・地学生物系の展示、標本群 →地球の歴史を辿る1時間


実はこれが1年生最後のクラス行事となります。遠足に始まり、林間学校を経て箱根巡検まで。校外学習もこれにて終幕です。
あと3ヶ月でクラス替えか・・・一担任としては寂しい限り。
できれば機会を見つけて、今度は自分で箱根に出かけてみてください。巡検で何を得たのかは、案外次に箱根に来たときにわかるのかも知れません。